僕は、何だかんだ毎週大河ドラマ「西郷どん」を楽しみにしている。
twitter上で「西郷どんは西郷どんであり、西郷どんとして楽しまなければならない。決して西郷隆盛の話ではない」という呟きをみかけたことがある。
実際ウソがかなり多いけれど、そういうフィクションとして楽しんでいる。
※ウソといえば、月照との逃避行では一切平野が出てこなかった。かと思えばその数話後ひょっこり出てきたらしい。
「西郷どん」で出てくるか知らんけど、僕の先祖かもしれない平野国臣について簡単にまとめた
さて、本日(2018年7月15日)から「西郷どん」は維新編が始まる。
新たな登場人物の中で、気になる人物がいる。
それが遠藤憲一さん演じる「勝海舟」だ。
僕は「明治維新とは何だったのか 世界史から考える」を読んで、勝海舟に興味を持った。
ゴールデンウィーク前半に「明治維新とは何だったのか 世界史から考える」を一気読みしたので紹介したい
僕の勝海舟についての知識は乏しく、江戸無血開城くらいしか知らなかった。
だから「その前後は一体何をしていたんだろう」と疑問を持っていた。
そこでちょっと前に「氷川清話」という勝海舟の語ったことをまとめた本を読んでみた。
これが、大変面白かった。
せっかくなので、紹介していきたいと思う。
「氷川清話」はどんな本か
勝海舟が晩年氷川の自宅にて語った様々なことをまとめてみた、という本である。
勝が語る昔話や思ったことが主な内容。
ざっと挙げても、「自己の経験について」、「古今の人物について」、「日本の政治について」、「日本の財政について」、「日本の外交について」「理屈と体験について」、「歴史と人生について」などなど。
実に幅が広い。
以下、気になった箇所を抜粋してみたいと思う。
海軍について
本書は勝海舟の生涯を客観的に書いたものではなく、語りをまとめたものだ
したがって勝海舟の経歴はwikipediaの方がよっぽどわかりやすいかもしれない。
しかしなんといっても本書は、勝海舟自身の口から種々のことを語っている点が興味深いのだ。
例えば、海軍伝習所のこと
あのころには、幕府も浪人も、口をそろえて海軍の必要を論じたけれども、しかし軍艦は、どうして製造するのか、金はどれくらい入用なのか、また乗組員はどんなことをするのか、いっこうだれにもわからないのさ。しかし、
とにかく海軍は必要であるということだけは気づいたから、それでおれなどを長崎へやって、オランダの海軍教師のヘルセレーキという人につけて、海軍術の研究をさしたのだ。
(中略)
長崎のほかに〔江戸の〕築地でも海軍所を建てて、列藩の子弟を教育しておったが、これらがまず日本海軍の基礎となったのさ。
勝海舟自身の性格もあいまって、誇張したものも中にはあるかもしれない。
だが、それも含めた動乱の時代を生きた人物のフィルターを通した語りこそ、本書の醍醐味なのだ。
勝海舟、西郷どん好きすぎるだろ
随所に西郷隆盛のことが出てきて、一々高く評価しているのが面白い。
おれは、今までに天下で恐ろしいものを二人みた。それは横井小楠と西郷南洲だ。(中略)その後、西郷と面会したら、その意見や議論は、むしろおれの方がまさるほどだったけれども、いわゆる天下の大事を負担するものは、はたして西郷ではあるまいかと、またひそかに恐れたよ。
また、品川で西郷と談判したときの話。
このとき、おれがことに感心したのは、西郷がおれに対して、幕府の重臣たるだけの敬礼を失わず、談判のときにも、始終坐を正して手を膝の上にのせ、少しも戦勝の威光でもって敗軍の将を軽べつするというようなふうがみえなかったことだ。その胆量の大きいことは、いわゆる天空海闊で、見識ぶるなどということは、もとより少しもなかった
そしてなんと、西南戦争の西郷にも言及している。
大西郷のごときは、明治十年にあんな乱暴をやったけれども、今日に至って西郷をうらむものは天下に一人もあるまい。これはひっきょう大西郷たるゆえんの本領が、明らかに世の人に認められているからだ
この西郷への肩入れっぷりは半端ない。
例えば大久保利通との対比においても、圧倒的に西郷を評価している。
ここらへんは「性格の合う合わないがあったのでは?」というのも否めない気がするが。
「日本人」を初めて意識。江戸無血開城を実現
「明治維新とは何だったのか」で半藤先生は「勝海舟は初めて国家を意識し、日本人という概念を理解した人だった」と述べられていた。
僕が勝海舟に興味を抱いたのはまさにこの部分なのだが、それも本文に出てくる。
幕府よりも国家が大事○ 自分の功績を述べるようでおかしいが、おれが政権を奉還して、江戸城を引き払うように主張したのは、いわゆる国家主義から割りだしたものさ。三百年来の根底があるからといったところで、時勢が許さなかったらどうなるものか。かつまた都府〔首都〕というものは、天下の共有物であって、けっして一個人の私有物ではない。江戸城引き払いのことについては、おれにこの論拠があるものだから、だれがなんといったって少しもかまわなかったのさ。
貧乏やら諭吉とのエピソードも面白い
他にも面白エピソードがたくさんある。
貧乏の話。
蘭学に通じていたが、分厚いオランダ語の本を每日徹夜して書き写した話。
幕末の志士達の批評。
維新後のこと。
単なる昔話だけでなく、今に通じる様な人生観や精神論などもある。
痛烈な批判もあれば、嘆きっぽいものもある。
物凄く人間味あふれる人だったんだなと感心させられる。
勝海舟に興味を持ったら、是非読むのをオススメする。
なお、氷川清話はいろいろ版が出ている。
どうやら氷川清話は、吉本襄の脚色が結構あったそうだ。
それを江藤淳と松浦玲が編集したのが「氷川清話」 (講談社学術文庫)だ。
hontoで確か100円くらいで見つけ、最初こちらを購入した。
しかし、自分の国語力が弱く、読み進められず、断念。
もう1つの「氷川清話 」(角川文庫ソフィア)は、本記事で抜粋した様な現代語で書いてあるので大変読みやすい。
語学に自信あれば前者、なければ後者。
僕のように2冊買う羽目にならないように注意されたし。