追悼ビル・ワトラス。そしてジャズのプロとアマチュアの距離の近さ

TwitterのTLを眺めていると、ビルワトラスの訃報が目に留まった

Trombonist Bill Watrous Dies at 79

 

あえて言うと、僕はビルワトラスの熱烈なファンでも何でもない。

だが、思い入れはある。

それは、ひょうんなことから一度だけ、プチライブみたいな形で共演させていただいたからであった。

Bill Watrousについて

もはや説明不要のミュージシャンだが、簡単に紹介したい。

ビルワトラスはアメリカ生まれのトロンボーニスト。

 

リーダー・アルバムや参加アルバムは数十枚。

そうそうたるメンツとやってきた、一流のミュージシャンだ。

中でも技巧的なものは、よくクローズアップされていた。

 

そして冒頭の林氏のツイートでもわかるように、実はビル・ワトラスは日本と大変関わりが深い。

義理の息子が日本人、そして孫は井出綾香さんだ。

 

そんな日本との関わりもあり、知り合いの伝手の伝手の伝手のような感じで、数年前プチライブを行なうことになり、共演の機会をいただいた

 

ビル・ワトラスと共演の機会が

振り返ってみると、共演の数週前からめちゃくちゃ緊張していた。

向こうからすれば、娘夫婦に会いにきたついでのついでのついでで、特に気にもとめないようなものだっただろう。

 

だが僕のような共演者は別だ。

怒られたらどうしようとか、ヘマしたらどうしようとか、悩んでもどうしようもないことに悩み、緊張していた。

 

ビルワトラスの雰囲気をつかもうとして動画を見て、より緊張が増した。

 

当日。

スタンダードナンバーを中心に、軽快な、そしてお客さんを巻きこんだ楽しい雰囲気のライブとなった。

 

ビル・ワトラスはエンターティナーだった。

その日はお客さんと楽しもうという精神があった。

 

各人のソロの後には毎回「スバラシイ!」とマイクパフォーマンスしていた。

もちろんへたくそな僕のベースソロの後にもだ。

忘れたけど、何かの曲では歌ったりもしていた。

 

そんなこんなで無事ライブも終了した。

この日だけはミーハーになり、スタンダードブック通称青本にサインしてもらった。

これはボロボロだけど、今でも手元にある。

 

Youtubeで観るようなプロミュージシャンと、共演というには恐れ多いが、一緒に演奏させてもらえた。

この件で僕は、プロとアマチュアの物理的距離の近さがジャズの1つの魅力だと再確認した。

 

ジャズの魅力の1つはプロとアマチュアの物理的な距離の近さ

「プロ」というと、自分とは比べられないほど別世界の住人と感じてしまう。

少なくとも僕はそうだ。

 

スポーツ選手なんかは大舞台で活躍をしており、僕らはテレビを通して次元が違うかのごとくその活躍ぶりに熱狂する。

テレビでなければ、数千円のチケットを購入し、スタジアムで蟻のような小ささに見える距離で、プロのプレーを観る。

 

芸能人もテレビの中の世界の人で、極たまに街で見かけたりするとそれだけで写真におさめようとする人が大勢いる。

こういった例をパッと挙げてみても、「プロ」と「一般人」との距離は普通離れている。

 

その点、ジャズはプロとの物理的な距離が近い。

これは僕がジャズを始めてかなり驚いたことの1つだった。

 

ジャズのライブはたっっっっかいクラブで行なわれることもある。

一方、全国各地の小さなライブハウスでも日夜行なわれている。

すごいところだと自分の座っている場所の1m先で演奏が行われ、プロの音に肉薄出来る。

これがジャズ研1年生時の僕からすれば、実に衝撃的であった。

 

しかも、終演後に話の出来るチャンスがあったりする。

しかもしかも、運が良ければセッションに付き合ってくださる場合も稀にある。

面白い話やタメになる話も、場合によっては聞けたりする。

 

めちゃくちゃダメ出しされたりもする。

印象に残っているのは、日野皓正氏が某ジャズライブハウスに来たときのこと。

セッション後、氏が一人一人に「なんでこのコードの時にその音を吹かない?」という様な話をされた。

僕の番になった時「君の悪いところは、タバコを吸っていることだ。そんなものを吸ったって一つも上手くはならない」と言われた。

この言葉をきっかけに、現在は禁煙に成功している。

 

ジャズを始めるまで、一般人に比べてあらゆるプロというものは雲の上の様な存在だと思っていた。

畏怖の念を抱いていたし、話自体成り立つはずがないという妙な思いを持っていた。

 

でもジャズのプロの音に接し、終演後その人間性に接することで、プロも人間なんだと思うようになった(当たり前だが)。

幸運にも僕の接してきたプロの方達は心温かい人が多い。

だから人の心を動かすような凄い演奏が出来るんだろうな、といつしか思うようになった。

 

もう一度言うが、僕はこのアマチュアとプロの物理的距離の近さが、ジャズの1つの魅力だと感じている。

ジャズ・ジャイアントとのプチ共演なんてジャズをやる前は思ってもみなかった。

だが、そんな世界がジャズにはある。

 

こういったある種の不純な動機で生のジャズにハマるのも、案外悪くないと思う。

 

 

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