手持ちのレコードを処分したが、一枚だけ残した。
それはMiroslav VitousのPurpleだ。
Miroslav Vitous “Purple”
一時期狂ったようにヴィトウスを聴いていて、彼の作品を集めまくった。
その過程で見つけたのが本作purple
ちょっとCD屋で探してみるのだが、無い。
実はこれ、未だにCD化していない作品なのだ。
ジャズファンの中では言わずとしれたザヴィヌル・ヴィトウス問題である。
昔から、欲しいと思った物は何としてでも手に入れる卑しさだけは人一倍強く、探しに探した。
うーん、レコードのみだからか、高い。
数日経つと運よくヤフオクに出品されていた。
競った記憶があるが、結局即決価格で落とした記憶がある。
で、聴いてみた。
あぁこのサウンドは、まさに70年代的な臭いのする作品だ…
ある面でかなりヴィトウスらしい作品だ
8もしくは16ビート主体で展開される曲がほとんどで、ビリーコブハムの刻むビートの上で浮遊感漂うザヴィヌルが心地よい。
そんでもってヴィトウスお得意のアルコがガンガン炸裂する。
僕はdrolesという曲が好きなのだが、本作収録のdorolesも疾走感といい、ギリッギリの感じがなんとも堪らなかった。
レコードだけかよ…というヴィトウスファンのためにyoutubeを張っておいた。
初めてレコードを手に入れた
purpleを手に入れるまで、僕はレコードというものを手にしたことがなかった。
もちろん再生機器もない。
当時、持っていたのはミニコンポ(dennon)だけだった
それでも僕はヴィトウスのパープルがどうしても聴きたかった。
そこでパープルを落札した瞬間にレコード再生環境を整えだしたのだ。
まず、レコードを聴くために何が必要か調べた。
すると、聴くだけなら案外安く組めることがわかった。
プレーヤー、アンプ、スピーカーが音響の基本だということをこの時初めて知った。
見てくれに憧れてテクニクスを買おうとしたが、手持ちの金が無く断念。
当時の最安を探し、audio-technica AT-PL30 レコードプレーヤーを購入した。
当時使用していたデンオンのミニコンポにちょうどいい端子があったので、別途アンプ・スピーカーを購入せず、ミニコンポに直つなぎして聴くことが出来た。
初めてレコードに針を落とした瞬間を、今でもはっきり覚えている。
針を落とした時スピーカーから出て来る「ボッ」という音。
特有のチリチリした音。
この音を聴いて初めて「あぁ俺今レコードを聴いてるぅ」と実感した
そして音源が流れる。
ドラムとエレピが聴こえ、何と言うか、それだけで痺れてしまった。
今思えば、音響的には全くたいしたことの無い環境だった。
だが、その初体験にはなんともドキドキ、ワクワクしたのであった。
それからレコードを集めだした
それからというもの、オーディオのグレードアップこそしなかったものの、たまにハードオフなんかに行っては安いレコードを漁るようになっていた。
またdisk unionに行った際、レコード館も探せるので、その選択肢の広がりがうれしかった。
あのレコードをパラパラめくる感じもまた、通っぽい感じがして好きだった。
何よりレコードはジャケットがいい。
某ジャズ喫茶みたいに、自宅で再生中のレコードはインテリアっぽく飾るのに一時期はまっていた。
僕はレコードを手放した
どうも僕は、熱しやすく冷めやすい性分らしい。
ジャズ熱こそ全く冷めないが、レコード熱はすっかり冷めてしまった。
何十枚しかなかったが、引っ越しの際はそれだけでも重い。
僕はdisc unionに買い取ってもらうことを決めた。
なぜ処分を決めたか。
そもそもレコードはここ数年聴いていなかった。
数年聴いてないものは、この先も多分いらないと思ってだ。
それでも僕は手元にpurple一枚だけは残した。
「なんとなく」というのが理由の多くを占める。
このレコードがきっかけとなり、新しい世界を見させてくれたことを思い出したからかもしれない。
ひとまず、これだけは手元において置こうと決めた。
僕はレコード再生を外注することにきめた
といっても、レコードで聴くジャズは良い。大変良い。
これは今まであらゆるジャズ喫茶にたむろした実体験からくる本音だ。
自宅での高級オーディオにも一時期憧れた。
けど、やめた。
少なくとも今の僕はそれを欲していなかった。
そこで、レコード再生は外注、すなわちジャズ喫茶で聴くことに決めた。
学生時代はジャズ喫茶でだらだらすることが多かった。
今思えば、そのだらだらの総時間を全て勉強にそそぎこめば、外国語1つくらい修得できたのでないかと感じる。
正直、「無駄な時間だったかな」と極最近まで思っていた。
だが、先日某地方の懐かしのジャズ喫茶を訪問。
エビスを頼んでまったりとしていたら、レコードからいい音が聴こえてきた。
あぁ、やっぱり僕はダラっとしながら、レコードの良い音でジャズを聴くのが大好きなんだな、と改めて感じた
糸冬