天正遣欧少年使節団をよく知らなかったが「クアトロ・ラガッツィ」を読んで驚愕した話 その1

「天正遣欧少年使節団」をメインに取り扱った若桑みどり氏著の「クアトロ・ラガッツィ

 

非常に面白い作品なので紹介したい。

全体感

この「クアトロ・ラガッツィ」は上巻・下巻に分かれている。

上巻は「華々しく」、下巻は「陰鬱」な印象が残っている。

その華々しさは「天正遣欧少年使節団の実現」、陰鬱さは「バテレン追放令によるキリスト教の禁教」から来るものだろう。

 

そもそも、あなたは天正遣欧少年使節団を覚えているだろうか?

歴史の教科書を開いても「天正遣欧少年使節団」は1行くらいしか書いてない。

そう、ほとんどの人はよく知らないんじゃないかと思う。

僕もそうであったし、何なら天正遣欧少年使節団というもの自体、記憶から飛んでいた。

 

だからこそ、本書を読み終えた時、ここまで壮大な現実があったことに僕は驚愕した。

 

どんな人にオススメか

僕はあえてこの本を「歴史に興味がない人」に勧めてみたい。

 

この本で描かれる人物、例えば織田信長なんかは、ついこの間まで生きていた人物かのごとく書かれている。

それぐらい頭に鮮明な描写が浮かんで、現実世界を忘れ、のめり込んでしまう。

 

ページをめくるごとに、もはやドラマや映画の様な映像が個々人の頭に浮かぶと思う。

それぐらい、グっと引き込まれる内容が詰まっている。

 

「天正遣欧少年使節団」というグローバル事業

僕の敬愛する楠木建氏がこの本を「グローバルビジネス」の本と捉えているのが面白い。

 

「天正遣欧少年使節団」は、イエズス会の再興に奮闘した、当時のグローバルビジネスマン:ヴァリニャーノの偉大な功績なのだ。

 

天正遣欧少年使節団は、教皇グレゴリオ十三世との謁見で一つのピークを迎える。

 

その後の急転ぶりは凄い。

宣教師のミスから、豊臣秀吉の怒りを買い、バテレン追放令へと繋がる。

 

天正遣欧少年使節団が帰国した際、彼らは青年になっていた。

そして悲惨な現状を目の当たりにし、彼ら自身も悲惨な最後を遂げる。

 

生き生きとした登場人物の描写

加えて、当時の状況を知ることが出来るのも面白い。

僕は幕末~戦後の歴史は積極的に学んでいるのだが、江戸時代以前の歴史には疎い。

 

個人的な感覚だが、明治くらいの人々は現代人と近しい感じがして、偉人伝などを読んでもリアルな想像を膨らますことが出来る。

一方、江戸以前の時代は、どこか大昔な感じがして、想像し難かった。

 

ところが、それはこの本で覆された。

当時の状況や人物達があまりにも生き生きと描写されているのだ

 

織田信長の描写

この本はめちゃくちゃ面白くて、何箇所も線を引いてしまった。

紹介したいところがいくつもあるのだが、今回は「織田信長」についていくつか抜粋してみる。

 

信長と宣教師フロイスが対談する場面。

なんと信長はフロイスを屋敷ではなく、「二条城の工事現場」に招いた。

 

そこで信長はフロイスに質問しまくる。

フロイス自身はこれを「あまり重要ではない前置き」としているが、信長にとっては重要なデータであった。

フロイスがただ個人的に日本に来たのか、それとも公的に派遣されてきた人物なのかを知るためでもあった。

 

さらに信長は、フロイスになぜわざわざヨーロッパから日本へ来た動機を聞いた。

するとフロイスは「日本人に救済の道を教え、世界の創造主デウスのみ心にかないたいという熱望以外なく、利益などは求めていない」と。

 

信長の「それだけのためにあらゆる危険を犯して来日したのか」という質問に、フロイスは「そのとおり」と答えた。

 

ここで信長はフロイスに、会見を聞いていた僧侶達を指差して批判する。

本書の文章では、この場面がまるで映画の1シーンの様であった。

 

さて、信長はなぜあえて工事現場で会見を行ったのか?

それは僧侶達に対し、宣教師の社会的位置付けをはっきりと示したかった狙いもあるかもしれない。

また、京の人々に公の場で自分の方針を伝えることによって、今でいうテレビで公開される会見をやってのけた。

 

すでに信長は僧侶集団の勢力をつぶすために多くの破壊と殺戮をやってきた。流血はきりがない。(中略)無血で宗教の入れ替えができるのなら、そのほうがずっといい。(中略)もっともそれはびくともしない古い勢力を崩し、自分こそがトップに立つためであったが。

 

また信長がしばしば口にした「彼らは日本人が見たことも聞いたこともない遠方の大きな国からやってきたのである」ということばは、信長が、国内ではなく、国外にまなざしを向けている人間だということを示している。いわば彼らは信長にとって、よその国の「外交官」なのである。世界に目を向ければ、遠い国家から来た外交官を粗略に扱うべきではない。

 

信長が「世界」を見据えていた先見性や頭の良さがにじみ出ているエピソードだ。

 

著者の紹介

著者の若桑みどり氏は西洋美術史に精通していた。

だがある時、いくらミケランジェロを研究しても「一東洋人の女が西洋美術を理解して何になるのか?」と考えてしまったという。

 

ひょんなことから天正遣欧少年使節団の記録を見て、興味がわいた。

そして7年の歳月を費やし、本書「クアトロ・ラガッツィ」を完成させた。

 

若桑みどり氏はこう語る。

私はずいぶん旅をしてきた。でもこれでほんとうに私がやりたかったこと、知りたかったことが書けた。

 

やっぱりこの本はめちゃくちゃ面白い

この本はあらゆる面で楽しめる。

 

ノンフィクションの歴史物として読んでもいい。

信長、秀吉の人物を知るために読んでも面白い。

 

もちろん、天正遣欧少年使節団がメインだ。

教皇グレゴリオ十三世との謁見は1つのクライマックスでもあり、華々しさがある。

 

また日本におけるキリスト教の歴史の一部を見出しても面白い。

これを読み、映画「沈黙」を見ると、禁教の凄まじさが嫌でもわかる。

 

とりわけ楠木建氏は様々な所で本書を紹介している。

リーダーの教養書」から引用してみたい。

 

本書がとりわけ秀逸なのはグローバル化の本質を浮き彫りにしているところにある。(中略)詳しくは読んでもらうしかないが、経営のグローバル化がいかに属人的なものであり、それゆえリーダーの資質に左右されるかがよくわかる。

 

色々な側面で楽しめ、考えさせてくれる作品「クアトロ・ラガッツィ」

僕は今一度「歴史に興味のない人」に勧めてみたい。

そして本書を読み終えた時、一変してその歴史の虜になっていると確信する。

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