「ブランドって何なのさ」を理論的に説明する本

昨年amazonのサイバーマンデーセールでkindleの本が半額くらいになっていた。

そこで、年末年始に読もうと思い、まとめて購入していた。

ジャンルは様々で、歴史、ビジネス、ウェブ関連などごった煮だ。

 

ほとんどは年末年始に消化できて、数冊ビビッときた本があった。

その1つが「プラットフォームブランディング」(著者:川上慎市郎氏、山口義宏氏)という本だ。

 

実は前の会社で、新ブランドの立ち上げに関わったことがある。

その中で、新ブランドの商品開発(食品)を担当した。

プロジェクトは進み、商品化され、実際に世間へ発売された。

 

だが、全く売れなかった。

 

新ブランドのロゴのデザインは悪くない。

いや、むしろ洗練されていてかっこよかった(売れっ子デザイナーを起用したのがデカイ)。

商品の中身は、まぁ悪くなかったと思う。

 

だが、全く売れなかった。

 

様々な問題が絡み合ってるといえばそうなのだが、なんだか腑に落ちない。

しまいには「そもそもブランドって何なのさ?」というのが当時の僕の疑問だった。

数ヶ月経ち、その疑問への答えを本書で見出したわけだ。

結局ブランドとは?

本書ではブランドを以下と定義付けている。

ブランドの定義は諸説あるが、本書では「ある製品・サービスについて『知覚された価値』と、それについて生活者の頭の中にある『識別記号』とが結びつき、包括された概念」を指してブランドと呼ぶことにしたい

つまり多くの人が思う、ブランド=ロゴというのは定義としては不十分だったわけだ。

「知覚された価値」というのがもう1つの肝だったのだ。

 

知覚された価値って?

本書でいう「知覚された価値」とは、「あれといえば、これ」とパッと想起できる価値のことだ。

 

例として「コカ・コーラ」。

そのロゴを見て「炭酸飲料、爽やかな気分」と想起できる。

また逆に「爽やかな気分転換」という欲求から「コカ・コーラ」(のロゴ含む)を思い浮かべられる。

このことから「コカ・コーラ」⇔「爽やかな気分」の知覚価値の関係があると言える。

 

では新しいブランドはどうすべきか。

もちろん生まれたばかりのブランドでも、ロゴを打ち出すのは簡単だ。

だが、知覚価値の提供は容易ではない。

 

本書でも知覚価値は生活者の頭の中で形成されるものとされている。

それを踏まえ、著者は「やや乱暴に」と注を入れながらも、ブランド形成のメカニズムを以下のように公式化している。

生活者のブランド評価 = 体験の魅力度 × 体験の量・時間 × 体験の一貫性

上記の式の「体験の一貫性」を保つ軸は2つあるとして、

長期間にわたって変わらぬ印象を与える「時系列での一貫性」と、どの顧客接点に触れても変わらぬ印象を与える「接点間での一貫性」

と述べられている。

そして、この「体験の一貫性」の重要性を見落としている企業が多いのだそうだ。

 

企業例

上で述べられたブランドの定義を踏まえ、本書では企業例がいくつも出て来る。

 

例えばスターバックスコーヒー

日本国内での拡大期では、莫大な広告費は使っていなかったのだという。

「立地の良さ」と「商品・サービスの一貫性」によって、そのブランドを作り上げた。

確かに東京と大阪と鹿児島のスタバで全然違う、なんてことはありえない。

むしろ気持ち悪いくらい統一されていて、「小洒落た居心地の良さ」を提供している。

 

また、本書で頻出するアップルは「顧客体験」に異常にまでこだわった企業の1つだ。

その例も面白い。

2003年、日本銀座店オープンに際して来日したジョブズ。

翌日開店する店舗を見回っていると、ふとあるドアの前で立ち止まった。

そこでジョブズはスタッフを呼びつけ「ドアノブの表面仕上げが他と違う。取り替えろ。」と指示。

通常取り替えとなると数日かかってしまう。

アップル日本法人は大騒ぎになったが、なんとかその日のうちに補修を終えることが出来たという。

「製品」だけではなく「ブランドに触れる前の認知から購入後までを全体の価値」として捉えていた、ジョブズの面白エピソードの1つだ。

 

本書について

本書は体系だって説明されているため、最初から順に読んでいくと最高に面白い。

久しぶりに速読せず、じっくり読んだ本だ。

 

目次に「基礎の基礎」と書いてあるブランドの定義を学べただけでも充分に価値が合った。

本記事で紹介した他にも、パナソニックとシャープの失敗とその違い、プラットフォームの重要性、ブランド戦略のあり方、優れたブランド戦略を有したソニーの失敗等、どれをとっても面白い。

 

本書の内容を把握し、日常で触れる様々な商品について「この商品はブランドといえるか?」を考えていくと、目が養われていくと思う。

 

それは「ブランド立ち上げます!他と違った高級路線!ターゲットは富裕層の50~60代女性!おもてなしの心を打ち出していこう!」の様な、鼻くそブランド戦略と一線を画す、実践的かつ戦略的な目になると思われる。

 

むすび

冒頭に戻るが、前の会社の新ブランドでは、明確な知覚価値を全く追求していなかった。(というか基本的なマーケティング手法の取捨さえ無かったのだけどw)

それに加えてリーダーの独断専行もあり、社長の承認も中途半端、社内の共有などされていなかった。

本記事では触れなかったが、ブランド戦略における組織の問題についても本書では言及されている。

 

では、その商品を売り出す時はどうしたか?

実際は商品が出来上がって、営業が味見して「じゃあ、どういうことを謳えるかな?」という本末転倒っぷりであった。

 

断っておくが僕は別に批判をしたいわけではない。

ただ、本書で書いてあるようなことを念頭に置くだけで、より素晴らしい商品へと昇華させられたのではないか、とせっかくのチャンスを台無しにした後悔があるのだ。

また、ガッツリプロジェクトに関われたのに、言われるがままハイハイ商品作りに取り組んだ僕にも責任は充分ある。

 

じゃあ失敗を踏まえてどうするか?

 

今の会社はというと、やっと自社ブランドを確立した段階である。

ただ、「知覚価値」についての考察はやはり、薄い。

しかも会社の価値観とか理念とかは抽象的で、およそ何を言っているのかわからないw

正直、毎週の理念の暗唱が非常に苦だw

 

でも知覚価値に注視するだけで結構化けそうだけどな、というのが感想ではある。

というか、知覚価値に注視している会社って、地元の企業を見渡せば、壊滅的だ。

これからはモノ消費ではなく、コト消費だ!と言われて久しいけれど、じゃあどうすればいいのかについては中身が無かったりするのかもしれないな。

 

僕?

と、とりあえず本書の学びを活かして、カイドーをブランド戦略していきますよ(白目

 

(2018.5.1追記)

実は先日会社でブランドスローガンについての研修があり、あらためて本記事を見直した次第。

やはりレバレッジ・リーディングで知識を頭に叩き込まなければいけない、と反省。

本の内容を忘れてしまう人のための読書法 「レバレッジ・リーディング」

 

糸冬

 

参考

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